2013年2月14日木曜日

日本の音楽市場


ようやく課題が終わって時間がとれたので更新。今回は音楽産業について考えたことを書き留めようと思います。

何かと弱ってきてると言われる音楽産業。でも2012年は生産額ベースで、実に14年ぶりに前年比プラス、09年以来の3000億円到達だったようです。しかし世界の市場と比べた時にふと気づくのは、日本では依然として「パッケージ」での流通が大きなボリュームを保っているということ。CDのマーケットとしてはアメリカを抜いて世界一なんですね。その分あまり進展を見せていないのが配信事業で、今はSpotifyはいつ日本に来るのかという話がアツくなっています。
12年の音楽ソフト生産額、14年ぶり増 AKB効果など
Spotifyは音楽業界の救い主? ユニバーサル幹部が語るデジタル戦略

そこで登場するデジタル戦略で気になるのは違法コンテンツ。ダウンロード刑罰化も記憶に新しい。しかし個人的には、これはかなり安直な法改正だったと思うんです。業界側の言い分は、複製が勝手にネットで共有されて売上が食われるというものでしょう。確かにそれもあります。でもここでは、無料だからこそ幅広くコンテンツが認知されるようになった、という見えないマーケティング効果が鑑みられていない。音楽がパッケージとしてだけでなく、商品として多様な側面を持つようになっている今日の市場では、この見えないマーケティングの効果を切り捨てることは致命的となるんじゃないでしょうか。
YouTubeやニコ動が音楽購入に好影響、一方で買い控え要因にも~レコ協調査

最近の例でいうと、きゃりーぱみゅぱみゅや江南スタイルといった歌手がミュージックビデオをYouTubeなどに投稿することで、世界的に知名度を高めたことがあるでしょう。無料でコンテンツを視聴できるからこそ、ファンや将来的なお客さんが生まれる可能性も出てくるのです。違法行為を恐れて自分の楽曲を大事に大事にしまっておくようでは、この試みは不可能です。一寸先の、確実だけど小さな売上より、これから大きな売上を生むであろう市場を育てていくための投資として、部分的な「許容・寛容さ」も必要なんじゃないかと思います。

実際にライブは顧客単価がパッケージより高いですが、成長傾向にありますね。詰まるところ音楽とは言っても、マス市場ではそれ自体が商品として訴求力を持たなくなってきているとも考えられます。つまり1500円のシングルを買うより、iTunesで105円のダウンロードを利用するという思考。逆に消費対象が単なるバイナリデータになってしまうことに多くの人が虚無感を覚えるようになったからこそ、ベンヤミンの言う「アウラ」を求めて、みんながライブに走るようになったのかもしれません。・・・なんて知ったかぶりをしましたが、『複製技術時代の芸術作品』をちゃんと読んだわけではないです(おい)。
1600億円-音楽業界でまさかの「逆転現象」発生中

話を元に戻します。要するにパッケージ偏重の流通とそれを保護するような厳しすぎる法律の制定は、ちょっと時代錯誤なんじゃないのかな、といくつかの記事を読んで思ったということ。複製できないライブという「経験」を商品にする、あるいは佐々木俊尚氏が言う「アンビエント化」を実現する包括的なサービスを商品にするといったように、もっと収益の多角化を真剣に考えるべきかと。その一環として既に述べた、部分的な「許容・寛容さ」をむしろ取り入れていく、チャレンジングな姿勢を見せてほしいものです。そうすれば日本の音楽だって、まだまだ先は明るいと思いますね。

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